日本建築学会都市史小委員会シンポジウム
シリーズ 「都市空間の物質性(マテリアリティ)」
第2回 「旅の媒介装置 物的環境が拓く関係性」
本シリーズは空間史(都市史・建築史)を物質性(マテリアリティ)という観点から捉え直すことを試みるものである。第一回である昨年度は物質性の即物的局面に着目したが、第二回の今年度は物質性の象徴的局面について、「旅」をテーマとして検討してみたい。
人間は歩き、旅をすることでその世界を拡げてきた。旅人と旅先の人々との出会いは、日常の生活の領域を遥かに超えた関係性をつくり出した。人が旅に出る目的は、霊場への巡礼・参詣、知の探求、名所の見物・観光、自分探しなどさまざまであるが、そうした行動はつねに物的な環境によって媒介される。例えば装飾や看板、サインなどのように旅人と場所を関係づけるもの、石碑などのように過去と現在を関係づけるもの、土産物や絵画、「写し」などのように人と人、人と場所との二次的な関係を生むものなど、これらは関係を起動させるトリガーとして働く。そうした意味でこうした物的環境のことを「旅の媒介装置」と呼ぶことにする。
媒介装置は多くの場合、地図や図面などには表出しない。それは都市・村落スケールと建築スケールには必ずしもおさまらない、曖昧な(「あいだ」の)存在であるためである。今回のシンポジウムでは、空間史(都市史・建築史)の研究者のみならず、旅人と旅先の関係を考察してきた旅行史研究者、そして「物」に描かれた名所について検討してきた美術史研究者を迎えることで、関係的で動態的な空間史の可能性を拓くことを目指す。
- 日時
- 2019年12月21日(土)10時〜17時30分
- 出演
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趣旨説明 岩本馨(京都工藝繊維大学)
セッションⅠ 媒介装置の構築
「石碑と旅人―景勝地松島の歴史的展開をめぐって」高橋陽一(宮城学院女子大学)
「つくられる天岩戸」岩本馨
コメント 東辻賢治郎(翻訳家、建築・都市史研究者)セッションⅡ 旅の形象化
「モノに見られる観光都市ヴェネツィアの象徴性」樋渡彩(近畿大学)
「再構想される洛外名所―「洛外図屛風」の景観描写をめぐって」井戸美里(京都工藝繊維大学)
「スーヴェニールのなかの都市」稲益祐太(久留米工業大学)
コメント 片山伸也(日本女子大学)
(敬称略) - 参加費(資料代を含む)
- 会員1,800円/一般2,000円/学生1,000円
- 定員
- 60名(事前申し込み制・先着順)
- 申し込みページ
- https://www.aij.or.jp/event/detail.html?productId=625053
- 主催
- 日本建築学会建築歴史・意匠委員会都市史小委員会