荒れ地のなかスタジオ/In-Field Studio 2019 in Otama
荒れ地のなかスタジオ/In-Field Studioは、「Field(=荒れ地)」を読み取り、「作る」ことから生活への構想と実践を生み出していくための学校。学校とあえて言うのは、たとえそれが限られた時間であっても、学びと実験と生活が同居する現場を目指すから。
過去4回にわたり、インド各地(バローダ、シャンティニケタン)にてワークショップを開催してきた(*1)。 2019年秋は、インドから日本の東北へと移動し、構想と実践が交差する試みを再開する。
場所は福島県大玉村。米作りを主たる産業とする田園地帯である。大玉村は福島市と郡山市の間に位置し、近年ベッドタウン化の兆しを見せ、2011年の震災以後も、人口が僅かながら増加傾向にある村。農村から郊外への変転の現場。何かが変わるとは、何かの崩壊を意味しているのかもしれない。風景の変転、想像力の減衰。技術から「わざわざ」が消えていくこと。
何かが崩壊へ向かう世界、生活のベクトルの軌道修正を図る。散らばっている小さな技術を群体として捉え、その連帯を探る。ヒトとモノが限りなく同じ地平に立って、全体性をでっち上げて満足することなく、張り巡らされたヒト・モノの関係の糸を手繰り寄せ、織り合わせていく。ヒトは、畏怖と喜びを同時に含んだ想像力を携えて、張り巡らされた糸に囲まれながら「作る」を試みる。
その「作る」の実験場の有様を、荒れ地と呼んでみる。ヒトとモノが群となり、断片的であっても連帯する取り合いの試行錯誤に取り組む。「作る」ことを通じて、ヒトとモノ、モノとモノ、ヒトとヒトの関係を修復する。
ヒト・モノ共同連帯のトライアルが、「建築する」ということだ。
ようやくここまで来た。ようやく建築が出てきた。荒れ地のなかスタジオでは、それから先を進めたい。
*1 2016年にはインド西部の古都バローダの都市中心部にて伝統的建築物の保存と再生をテーマとした実践に取り組んだ(共催:Vadodara Design Academy)。
そして2017年はインド東部のシャンティニケタン(*2)という町の郊外にある農村ケラダンガ村にて、自然環境と人間生活のあり得る関係性を現場制作を通して模索した(共催:Vadodara Design Academy、Visva-Bharati Uni.)。
*2 シャンティニケタン Santiniketan:1901年、インドを代表する詩人ラビンドラナート・タゴールがその地に小さな学校を開始した。設立当初はわずか教師6人と学生5人という極小の学校で、野外の木陰に円座する形で授業が行われ、詩や、文学、美術、舞踏、踊りを含む全人的な教育を目指したと言う。また、当該の近郊農村の復興を意図して、農業と手工業の学校を作っていた。
シャンティニケタンの学校には、土着の農村生活と芸術の、いわばごく自然な和合が、タゴールが描いたヒューマニズムの端緒として確かに存在していたのだろう。それは、日本の岡倉天心の「総合芸術」というモノを視る眼差し、さらには宮沢賢治の「農民芸術」が描こうとした創作世界に通じているはずだと考える。今年もその連関を探る試みは続ける。
2019年8月
佐藤 研吾
(Director of In-Field Studio)
- 日時
- 2019年9月10日(火)〜9月14日(土)
・会期前後それぞれ2〜3日は準備時間とします。
・参加日程についての相談応じます。 - テーマ
- 「技術のなかの荒れ地、荒れ地のなかの技術」
- プログラム
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1. 建築金物(主にドアハンドル)作り、真土(まね)型鋳造、フルモールド他 の実験
2. 中山間地の風景構築、養蜂のための巣箱作り(モデル作成に使う蜜蝋生成のための準備と、風景への介入のトライアル)
3. 毎朝レクチャー、毎晩クリティークと話し合い - 講師
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佐藤研吾(建築家、インフィールドスタジオ・ディレクター)
伊藤洋志(仕事づくりレーベル「ナリワイ」代表)
山口純(建築設計方法論研究者)
ミロン・デュッタ (建築家(インド・シャンティニケタン))
(敬称略) - 参加費
- 20,000円(食費、宿泊費を含む。交通費は別途。)
- 定員
- 10名程度
申し込み方法は下記詳細ページをご覧ください。 - 主催
- In-Field Studio
- 会場
- 福島県安達郡大玉村玉井字小名倉山2ロコハウス 周辺
Google Map https://goo.gl/maps/yJyPKg22hA2nxDYH8
最寄のJR本宮駅から徒歩40分。送迎可能予定。