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戦後空間シンポジウム01「民衆・伝統・運動体 — 1950 年代/建築と文学/日本とアメリカ」

2017年12月16日(土)

建築論・建築的実践が接続すべき人々(people)を呼ぶ日本語は、時代によってさまざまに変転してきた。国民、 人民、民衆、人間、大衆、住民・・・。 これが底流的に、あるいは反復強迫的に、〈戦後空間〉という磁場のひとつの極をなしてきたといってよいだろう。 しかし、なぜそうなったのか。

このシンポジウムでは、 1953~57 年頃の「民衆論争/伝統論争」の 《周辺》を問う。これら論争は、従来、丹下健三/西山夘三(近代主義/マルクス主義の対立)、丹下健三/白井晟一(弥生的洗練/縄文的野蛮)といった対立の図式として知られ、また民衆的エネルギーの建築的表現という問題系においてメタボリズム運動の前史として 捉えられることもあった。しかし、これらはあまりにも「建築」(建築ジャーナリズム)内的な論調であり、少し視野を広げるだけで 50年代の建築をとりまく状況はかなり違って見えてくる。

ここでは文学をみてみよう。中央・地方の文芸誌の運動、文化サークル運動、生活記録運動、国民的歴史学運動、 アヴァンギャルド文学・美術の運動・・・。そこには、戦前と変わらぬ教条的・定型的な抽象的議論をふりはらい、 一歩踏み出して、作家(専門家)が民衆・社会にどのように方法的につながるかを模索する「新しいリアリズム」が実践を通して目指されていた。

このような視角から建築の1950年代を見直すと、そこにも多数の小さな「運動体」の簇生、建築雑誌編集者た ちの「運動」、あるいは 農村を目指す「運動」などがあり、やはり「新しいリアリズム」の獲得が目指されていたこ とがうかがえる。朝鮮特需からビルブーム、復興から成長へ、民主化から右傾化へ、という時代の趨勢は、進歩的 建築家を糾合した戦後間もなくの運動体 NAU(新日本建築家集団、 1947- )を崩壊させたが、その後にこそむしろ実践の可能性が探索されたのだろう。

一方で興味を引くのは、「民衆」「伝統」をめぐる議論に、特徴的な「世界地図」が見えそうなことである。「新し いリアリズム」を目指す運動は、ソヴィエトの東西両周辺で起きていた。つまり東欧諸国(および西欧の左翼)と、 中国(および東アジア・中米の左翼)である。そこには広大な〈国際空間〉がイメージされていた。 そのようにみるとき、他方で、アメリカ合衆国と日本のあいだにつくられた文化・情報の〈交通空間〉の重要性 もまた明らかになってくるだろう。この線を通じての日米の人的交流もまた、「新しいモダニズム」という回路にお いて「民衆論/伝統論」を活性化させただろう。

戦後空間シンポジウム 01では、以上のように(1)文学の潮流を参照し、(2)アメリカとの人的交流を見ることによ って、「民衆/伝統」をめぐる議論と運動についての私たちの見方を立体化し、「戦後空間」のひとつの捉え方の可能性を見出したい。

日程
2017年12月16日(土)13時30分~18時
出演
主旨説明 青井哲人(建築史/明治大学)
講演1 「文化運動のなかの民衆と伝統」鳥羽耕史(日本近代文学・戦後文化運動/早稲田大学/1968-)
講演2 「Intertwined Perspectives of ‘People’ and ‘Tradition’ in Architectural Exchange between Japan and the United States(tentative)」Ken Tadashi Oshima(Architectural History, Theory and Representation/Japan Studies Program, University of Washington/1965-)
コメント 日埜直彦(建築家/ 1971-)
(敬称略)
料金
一般2,000円、学生1,000円(資料代含む・当日会場でお支払いください)
定員
60名(申し込み先着順)
申し込みページ
https://www.aij.or.jp/event/detail.html?productId=610559
主催
日本建築学会 建築歴史・意匠委員会
会場
建築会館ギャラリー
(東京都港区芝5-26-20 建築会館1階)
  • JR山手線・京浜東北線田町駅(三田口)より徒歩3分
  • 都営地下鉄浅草線・三田線三田駅(A3出口)より徒歩3分
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